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TOKO PROJECT

シリコンバレー発のテックニュースを中心に発信しています。時々、食べ物や健康に関する情報を発信しています。トライアスロン挑戦中。

DeNAの「WELQ(ウェルク)」の問題で、ウェブメディアの在り方が問われている気がするので部外者が勝手に考えてみる

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DeNAの「WELQ(ウェルク)問題」のココまでをまとめてみる。

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【この記事の目次】

私の2日前のエントリーであるWelq(ウェルク)で炎上しているDeNAがこんな事業をしないといけない訳。決算書で見るDeNAのジレンマ。 - TOKO PROJECTへのアクセスが全然収まる気配がありません。こんなに話題になるなんて全然思っていなかったので正直戸惑っています。GIGAZINESmartNewsNewsPicksといった、自分が普段よく見ている名立たるメディアに自分の記事が掲載されてしまい、不思議な感覚に陥っています。なんだか「幽体離脱をした気分」で他のメディアに掲載された自分の記事を見てしまっています。(これではイカン。)このブログは月10万PVに届くぐらいになってきましたが、突き抜けました。改めてソーシャルの拡散力に驚愕です。

 

さて、本件については、ブロガーの永江さんの11月24日の第一砲の記事で火が付いてからいくつか動きがありました。起点となった記事をまとめてみました。

 

①燃え始め:無責任な医療情報、大量生産の闇 その記事、信頼できますか? | Buzz Feed  

この辺から少しずつ煙が立ち始めていた気がします。ブラックシードや水素水といった「?」といったデマ情報が目立ち始めて、ウェルク自体の運営方針やその手法等の問題が強く提議され始めました。

 

②第一砲DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回) | More Access! More Fun!

そして、この永江さんの記事で完全に火がつきました。グーグルで「DeNA」で検索してもこの記事がオフィシャルサイトに次ぐぐらいの上位に表示されていました。

 

ーココでウェルクが「編集部からのお知らせ」を発表。内容がマズくて更に燃える。

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参考:【お知らせ】「専門家による記事確認」および「記事内容に関する通報フォームの設置」について|WELQ [ウェルク]

 

③加勢東大薬学部五十嵐准教授がDeNAのウェルク(Welq)をさくっと検証した結果(シリーズ第3弾) | More Access! More Fun!

問題の存在に賛同し、ウェルクへの批判に加勢する人がネット上で一気に増えてきました。パクリ記事の魚拓取りやパクリ具合の検証が次々と進み、その違法性やパクリなど倫理的にアウトな点について、DeNAが完全に言い逃れができないところまで追い詰められた感があります。

 

④組織的な関与を示すマニュアルが内部からリークDeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言 | Buzz Feed Japan

そして、この記事で完全にDeNAがKOされました。現役社員に裏取りまでしています。そして、ウェルクだけでなくDeNAが運営するその他のメディアの運営上のマズさや、ガバナンスの問題や組織としての倫理観の低さまで浮き彫りになってしまいました。

 

そして、現役の都議も動き出しました。おときた駿さんが行政を動かそうとしています。

 

これだけ燃えていても、運営元のDeNAは問題が指摘されている記事を続々と削除しているだけでダンマリです。

 

追記:11/29 ウェルクは全記事を非公開にした事を発表しました。

news.yahoo.co.jp

 

更に、タイミングが悪いことにDeNAの創業者である南場会長は11月24日に講演会を行っていて、以下のように語ったそうです。

特別講演で挙げた、新規事業のもう1つが、2014年から開始したヘルスケア事業だ。南場氏同様、それまで健康だった夫が大病を患ったあと、2年にわたって闘病生活をともに乗り切った。「夫が健康でなくなって後悔の念にさいなまれた。病気になって悔やむ人が減ることを願って、会社に戻った2013年、ヘルスケア事業の立ち上げに着手した」と、南場氏は経緯を語る。

参考:速報 - 新規事業で日本改革に挑む、DeNAの南場会長が講演:ITpro

もう少し遡って11月4日には、守安社長が以下のように語っています。

守安功代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は、「キュレーションプラットフォーム事業は、利用者数や売上高が想定より早いペースで伸びている。今後も安定的な増収を見込んでいる」と話す。

参考:ニュース - DeNAの2016年度上半期は増収増益、スポーツと新規事業が好調:ITpro 

経営陣の発言が概ね裏目に出てしまっていますね。DeNAは順調だったこの事業に相当な投資を行い、IR等を通して投資家を期待させてしまっているので、「自ら事業をシャットダウンすること」を相当躊躇してしまっているのだろうと思っています。(憶測です) 

DeNAの「WELQ(ウェルク)」があぶり出したウェブメディアの課題

今回の「WELQ(ウェルク)問題」を通して思う所があったので、完全に部外者なんですが、勝手に考察して、勝手に語ってみたいと思います。個人的には、今回の問題は、コンテンツを作るウェブメディアや記事を読むユーザーに対して「このままでいいの?」と言っている気がしてやまないのです。特に3つ。

  1. メディアに期待される役割とビジネスモデルのジレンマ
  2. Googleへの依存性
  3. メディアと読み手との関係性

1.メディアに期待される役割とビジネスモデルのジレンマについて

この点は自分が書き手として、いつも感じてしまう所です。ウェブであるかに関わらずメディアに期待される役割とは「価値のある情報の提供」です。

そこには「正確性」「速報性」「面白さ」「独自性」などの要素があることによって「読み手にとって価値のある情報」になります。「権力の監視」など色んな言葉はありますが、概ねこのメディアの役割には疑いの余地がないと思います。

メディアがビジネスとして成立しようとすれば、当然収益を得る必要があります。書き手もボランティアではないので生活をしないといけません。株式会社であれば出資者に利益を還元しないといけません。そして、ウェブサイトの構築や管理はゼロコストに近づいていますが、それでも少なからずお金が必要です。

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画像:33 Proven Ways To Monetize Your Website or a Blog - WebsiteSetup.org

 

(※上の画像のリンクによると33のマネタイズ方法があるようですが)

一般的に"ウェブ"のメディアの場合の収益源は概ね、定番の3パターンです。

①GoogleアドセンスのようなPPC広告をユーザーがクリックする

②Amazonや楽天等の商品を紹介するアフィリエイト広告でユーザーが購買行動をする

③記事の閲覧を有料にして月額を読者に課金する


このブログもそうです。Googleのアドセンスの広告を貼っていますし、はてなブログによって提供されている、Amazonの商品紹介用のブログパーツも利用しています。僕はこの収入によって毎月書籍を数冊買ったり、はてなブログProの料金を払うぐらいの収入にはなっています。 例えば、こんな感じです。今、あなたがこのリンクをクリックした場合、僕が一生懸命書く、この先の記事の内容は読んでいただけないでしょう。

Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書

Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書

 

このある種のお小遣いは、僕が記事を書くインセンティブになっているのは間違いないのですが、僕自身がブログを書く1番の理由は「読んでもらいたい」からです。今回のバズった記事のようにコメントが沢山もらえて、建設的なフィードバックをもらえることが1番の快感です。


ところが、ビジネス的に考えると、この①のアドセンスも②のアフィリエイトも、共通して「ユーザーの読むという行為を中断させる」のです。①であれば、広告先のウェブページに飛んでいって自分のブログから離脱してしまいますし、②であれば同様にブログから離脱してユーザーはショッピングを始めてしまいます。※③の有料課金は後で書きます。これは、いつもジレンマに駆られてしまいます。「カネの悪魔的な怖さ」も感じています・・・

 

この葛藤や相反は、私のような「零細ブログ」でも当てはまりますし、DeNAのような事業者として「利益」を追求した時は「ユーザーを離脱させればさせるほど収益が上がる」とも考えられてしまい、メディアとしての役割や願いと相反するマインドを生みやすいのです。

 

特にDeNAのようなコンサル会社の出身者が多く、とても事業の効率性追求にこだわる企業は、(他の多くのメディア運営企業と同じく)このメディア事業でも、絶対に計算式にしてアプローチを考えているはずなので、【訪問ユーザー数×訪問当たりのPV×平均広告接触数×広告クリック率×広告単価=収益】といったように捉えているはずです。

 

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画像:Data-driven software making analytics work for businesses | ITProPortal

 

この視点でウェブメディアのビジネスを考え始めると、1番アプローチしやすいだろう【訪問ユーザー数を増やす】方向に動くのは自然です。広告単価は景気や広告主の意向に強く影響を受けますし、クリック率向上もアドテクの領域(DeNAはここも強いですが)です。そして、訪問当たりのPVを増やすことはメディアの価値の向上には繋がりますが、収益を直ちに上げるものではありません。単純に効率性で言えばユーザーを速やかに離脱させた方が収益は上がるのですから。

 

【訪問ユーザー数を増やす】を増やす為のアプローチを考えると、以下の3つの方法があります。

 

①検索エンジンからの流入を増やす

②ソーシャルメディアで拡散させる

③ブックマークやRSS経由でリピーターを増やす

 

先程の式のようにKPIを設定して、データを分析して効率性の良いアプローチをしたいDeNAのような企業にとっては①が唯一の選択肢になります。その理由は検索エンジンはハックできるからです。「キーワードごとの検索数」や「関連キーワード」、「競合の分析」や「検索エンジンのアルゴリズム」などのSEOに必要なデータがある程度入手可能で、それを分析することでデータドリブン型のアプローチが可能になります。ここで強みが発揮できるのであれば、競合メディアと差別化できる余地が大きいからです。②と③はある意味予測不可能な点が多く、企業が戦略を展開するのには向いていません。

今回のDeNAが『パレット構想』で採った戦略も【訪問ユーザー数を増やすためには検索ボリュームのあるキーワードで検索エンジンの上位を独占することが有効だ。その為には<SEO的に最適な記事>を量産することがもっとも有効だ。その記事は低コストで量産できる方法がある。】という方向性で進められたと推測できます。

 

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画像:今回も問題になった「死にたい」というキーワードでの検索ボリューム


冒頭のテーマ設定に立ち戻って、メディアに期待される役割が「価値のある情報提供」であったことを思い出すと、<SEO的な最適な記事>=価値があると決して言えないと思います。既にお話しした通りジレンマに毒されると、その役割は忘れ去られてしまう可能性が高いのです。更に、今回のウェルクの問題は情報自体に価値があるどころか有害で、更に制作過程にパクリや盗用があった事でメディア自体も社会的に有害な存在だったことが、明らかになり、炎上が加速したのだと僕は考えています。

僕はこの問題に絡み、このようなツイートしましたが、現在のSEOで上位表示されるような(ウェルクがそうであったように)のルールを意識して記事を書くと、読むユーザーにとっては読み辛くなることを感じています。

読み手としても、最近の傾向としてもウェブ上にリリースされる記事の文字数は以前より長くなっていることを感じます。そして、書き手として検索エンジンに評価されるのも文字ボリュームがある記事だと感じています。

 

更に言うと、「既にある1,500字の記事をなんでもいいから5,000字ぐらいまで引き伸ばして」っていうライターに対してのオーダーが実際に増えているそうです。

 

記事に不足していた情報を追加することで、情報の価値が上がる事もありますが、ライターさんは◯円/文字という料金体系で仕事を受けているので、どうしても楽して文字数を増やしたいというインセンティブが働いてしまいます。例えば、こんな風に文字数を増やすことも可能です。情報の価値は上がっていません。ただ、長くなっただけです。

Before:「SEOを意識してライティングをすると、誰に向けて書いているかわからなくなるよね」

After:「最近のグーグルの傾向を鑑みて、SEOを意識した上でライティングをすると、どんなユーザーに向けて記事を書いているのか、よくわからなくなるよね」

こうした動向によって、ウェブ上にある記事全体の量の増加と価値の増加が比例しなくなっているのです。価値が増加しないのは、「本当に価値のある情報の発見可能性」が、「価値のない情報いよる妨害」によって落とされているからです。

 

実例で言えば、病気や健康の事を知りたいユーザーは本当は「WELQ(ウェルク)」ではなくて「MEDLEY(メドレー)」に辿り着きたいのに、そうはなっていないんです。

「MEDLEY(メドレー)」は医師が作っている医療系のメディア/DBです

medley.life

 

2.Googleへの依存性について

ここまで問題を分析すると、問題は「Googleの検索エンジンへの過度な依存」なのではないかと考えてしまいます。メディア事業者がビジネスをドライブさせる為に、訪問ユーザー数を増やそうとすれば、意識するのはやはりGoogleなのです。

 

Googleも「ユーザーが検索エンジンに対して信頼を失えば」自らの首を締めることになるので「価値のある(ユーザーが求める)情報を上位に表示させる」ように検索のアルゴリズムを過去に何度も変更し改善を試みています。

 

1つの例として、GIGAZINEが報じたようにGoogleは悪質なコンテンツの除外/通報ツールをブラウザの拡張機能として一般ユーザーに提供しています。

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参考:Google検索結果の悪質なサイトを非表示&通報し検索品質アップに貢献できるGoogle公式Chrome拡張機能「Personal Blocklist」 - GIGAZINE

 

Googleは頭の良い人達と優秀なエンジニアを集めて「現在、実現できる最適解」を目指すべく、可能な努力は試みているんです。

今回の件で浮き彫りになったのは、「ユーザーもウェブメディア側もGoogleへの依存度が超高い」こと、「DeNAの検索エンジンの攻略レベルがとっても高かった」ことです。これに対してのスジの良い改善案が浮かばないからこそ問題の根が深いと考えています。

Googleはアメリカの大統領選で批判を受けた虚偽コンテンツへの対策や、今回のようなコピーコンテンツ対策を進めるでしょうが、DeNAのような方針で戦おうとするプレイヤーとのイタチごっこは人々が「読むことによって情報を得ようとする限り」続く気がします。

 

今回の件ではDeNAが東証一部上場企業だから「企業価値を損ねるような批判を避ける為に止める」というインセンティブが働きますが、未上場の無名のモラルのない企業が同じことをしようと思えばできてしまいますし、それを防ぐ方法も見当たりません。これは、Google、メディア、ユーザー三者の共通の課題だと感じています。

今後は、Googleの検索をベースに個別のユーザーニーズに合致するようにカスタマイズした検索サービスなんかは出てきてもおかしくないですね。フィンテックベンチャーの『アルファセンス』提供する「Googleから投資に関連しない情報を排除した投資家向け検索システム」なんかがその例です。

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3.メディアと読み手との関係性について

僕は、「メディアと読み手の関係性」にも疑問を持っています。今回のウェルクの件でいえば、そのメディアとの関係性は無いに等しいのではないでしょうか。「ウェルクのファン」なんてのはほとんど存在しないでしょうし、下手したらメディア側は「検索の都度、狙い通り網にかかってくれる魚」としかユーザーを見ていないのでしょう。

スマートニュースやフェイスブックなどのプラットフォームから情報を得る事が多くなったユーザー側からしても「特定のウェブメディアのファンだ」という人は少ないのではないでしょうか。これって健全でしょうか?

 

とはいえ、ウェブメディアを運営する側としても、ファンやリピーターを増やす方向にはなかなかシフトできない事情があります。インターネットとモバイルインターネットが広く普及し、コンテンツの量も爆発的に増えたことによって「情報はタダ」と思っているユーザーが増えてしまっていると私は考えています。

それを象徴するように、AppStoreでは「広告ブロック」のアプリがランキングの上位にランクインしています。このある種の「広告がウザい」というユーザーの意思表明は、「情報にも価値があること」が忘れられている事を意味しているのではないでしょうか。これらのユーザーを相手にビジネスをしても儲からないのです。

 

既に、マネタイズの方法として書いた③で有料課金する方法もありますが、これはかなりメディアのブランドやコンテンツのクオリティを担保できないと成立しません。海外ではウォール・ストリート・ジャーナルや、国内ではNewsPicsなどの本当に限られたメディアだけでしょう。中小メディアが有料化に踏み切れるユーザーの土壌があるとは到底思えません。

そして、個人的には大手のメディアが記事の有料化を進めてくれることを願っています。有料化して記事をクローズにすると検索流入が減るという課題はありますが、「価値のあるものにはお金を払う」ということがわかりやすく健全で対等な関係だと思うし、「良質な書き手に提供した価値に見合った収入が入るシステム」ができると良いと思っています。 

ちょっと、長すぎて何を書いているのかよくわかんなくなってきたので終わります。とにかく「検索したら探している情報が見つかり」、「書き手が良い情報を提供しようと努力て切る」健全な状態を望みます。それが実現できるようにメディアとユーザーで健全な関係構築が必要だと思います。そして、自分のブログも成長を狙いつつ方向性を模索したいと思います。